録音作品を作ることとは

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今日のレコーディングは専門学校でのバンドレコーディング。
相当久しぶりに1曲に丸一日を掛けての長時間レコーディング。一日掛けてバッキングトラックだけ、歌とミックスは後日というゆとりある今で言えばかなり贅沢なペースだ。

でもほんの数年前まではバンドのレコーディングとはそういうモノだった。ところがここ数年は一日に数曲録るのが当たり前な状況になっている。
それはレコーディング技術の進歩でもバンドが優秀になったのでもエンジニアや僕の経験値が上がったせいでも全くなく、とても悲しい現実としての低予算が主たる要因だ。

例えば今日のレコーディング。専門学校生のバンドとは言え、なかなかに優秀なバンドだ。そこらのヘタなプロバンドよりは演奏力も歌唱力もあるし楽曲の完成度もバンドとしての出来上がり具合も高い。
じゃ、何故1曲に一日かかるのか?
それは一言で言えば「ちゃんとレコーディングをした」からだ。音作りから始めドラムのチューニングも楽器選びも何もかも「普通に」やったからだ。バンドの演奏に無駄に時間がかかったりアレンジの手直しに時間が掛かったりエンジニアの音決めが遅かったり僕の判断が遅かったり無駄口が多かったわけでもない。

レコーディングとは本来そういうものだ。そうやって時間を掛けて音を磨き上げて行く作業だ。

ところがこれを金額に置き換えた時に、一日のスタジオ代、エンジニア代、機材費、僕のギャランティ等、数年前の常識で考えれば 40〜50万円/dayくらいはかかるだろう。最近の廉価なスタジオ、低価格になったエンジニアフィー、僕のギャランティ無しで考えても 15〜20万円/day 近くはかかるはずだ。
それで歌録り前のベーシックトラックだけ。
アルバムレコーディングを今日のペースで11曲録ったとして、オケにおおよそ10日、歌に7日、ミックスに7日かけたとすると、最低360万〜数年前レベルで1000万強。
もちろんCDも売れない時代にペイできるわけはない。

音楽を作るとは、その作業や内容を知らない方達からは「何て法外な経費を掛けて!ナンセンスだ!」と言われるに違いないが実はこういうお金の掛かることなのだ。
実際にはこの録音だけに掛かる経費以外に宣伝等にもかかるし、色々出て来る。

例えば今日の作業を3時間で歌まで含め終わらせることも可能だったかも知れない。でもこの一日の作業を3時間でさっさとやった後に何が残るだろう?そりゃ作品は残るけど。
例えばバンドが一日掛けて1曲をやり遂げて得た経験はたった3時間では決して得られない。それはその録音に関わっているこちら側も同じだ。もちろん結果の音にもそれは残る。

こういう事を言うとまた「老害」呼ばわりされたり「バブルの…」とか言われたりするのかも知れないが、音楽(録音物)を作ることには工芸や職人芸と同じ様な時間の掛け方や磨き上げ方がある。
金銭や対時間効率だけで語れることでは決してない。
一週間かけてやっとできた一つの食器と機械作りで5分で出来上がってしまう食器のどちらに価値があるかなどと言う話しともまた違う。

音楽をちゃんと作るとはそういう事だと思う。そしてそういう時代がもし終わったと言うなら音楽を作れる時代は終わったのだと言うのと同義だろう。

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This page contains a single entry by masahide sakuma published on December 10, 2012 3:08 AM.

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