今の音楽状況を今度は楽器の側面から見てみよう

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電気楽器(電気的に弦振動を増幅する)が開発されたのが1920~30年代。日本では4代目杵屋佐吉が1931年に電気三味線を演奏しています。
その頃から生楽器の音量を拡声する目的で電気楽器の開発が進み、1950年代初頭にレオ・フェンダーによりエレクトリック・ギターの完成形が作られるわけです。

電気ギター(以下エレキ)の完成により音楽の表現は一変しました。その後のアンプやエフェクター(特にFuzz等歪みモノが後世に与えた影響は大きい)の開発により更に大きく変化して行きます。
それまで大音量には大人数のアンサンブルが必要であったのに、少人数でも大音量を手に出来ることにより表現手法が大きく変わりました。
…と、こんな事は誰でも知っていることで。

さて、エレキの完成と共に起きたのがロック・ムーブメントと言えるでしょう。ブルースから始まり短時間の間に進化を遂げて行きます。
それから既に60年(なんと半世紀以上!)実は楽器的には何も進歩してないのです。(シンセサイザーに関しては後述。ここで言う楽器は弦振動等リアルな振動が元になっている楽器)

ロックが多くの部分を楽器に依存し発達・進化してきた音楽とすれば(精神性は別にして)60年もの歳月を経た今、音楽的に発展しようは無いところまで来ているのは自明でしょう。
実際僕らが簡単にセッションをする時、半世紀以上経過しているのにいまだにブルースセッション等をついやってしまいます。それは楽器の特性的にそこから抜け出せないからです。そんな古臭い音楽をまだウキウキとあるいは酔いしれながらやっているのが現状でしょう。

僕自身ギタービルダーとしてギターメーカー(SGcrafts)も一時期やっていましたが、ことエレキに関してはもはや完成されていて全くの新しいアプローチはかなり難しいのを実感しています。”よりよい”楽器の開発はまだ可能性はあるのですが、新しい楽器(先に述べた弦振動等を元にした)は僕にはもう思い浮かびません。
とすると、ロックミュージックの進化(変化?)の仕方はすでに限定されていると言えます。

逃げ道は…?
短絡的には電子楽器となりそうです。ところが電子楽器もその開発はエレキと近い時代からスタートし昨今のコンピューターの進化により来るところまで来てしまった感はぬぐえません。減算合成から始まり加算合成、ウェーブ・シンセシス、サンプリング、グラニュラーシンセシス等ほぼ考え得る方式は既に出そろってしまいました。それらがiPad上で動いたとしても、これは楽器としての進化とは少し違います。便利・効率的な意味での進化かと思います。

もうひとつ。これら電子楽器の最大の弱点はマン・マシン・インターフェースの在り方です。
通常これらの楽器を演奏するにはキーボード(鍵盤)が使われます。ところがこの白鍵黒鍵のキーボードはこれらの楽器をコントロールするには極めて不合理なのです。通常鍵盤のノート情報とスピード(ベロシティ)情報くらいしか送られません。受け側のシンセサイザーはもっともっと多くの情報を受け取れるのにです。
しかも通常の鍵盤は近代音楽の演奏上決して効率の良いものとは言えません。
もちろんこの問題を解決すべく過去にも様々な種類のインターフェースは開発されていますが、どれも主流にはほど遠い状況です。
電子楽器の開発にも関わった(ROLAND TR-808やKAWAI K3)身としては以前色々考えたりしたのですが、このインターフェースは予想外に難しいです。フィジカルな動きを如何に楽器側に必要な情報に置き変えて伝えて行くか。そのバランス・整合性を得るのは相当難しいものです。
そう思うとシンセサイザーは音色(音楽性?)としてはまだまだ開拓の余地はあるのですが、楽器としてはコントロール機能が限定されてしまうところに居るかと思います。

さて、エレキも進化せず、シンセも限界が見え・・・。楽器の進化と音楽の進化・変化を対峙させ考えた時に現状の音楽の煮詰まりも垣間見えて来る様に思うのは考え過ぎでしょうか。

<次代の楽器論、その時代における音楽制作の可能性はまたいつか>

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This page contains a single entry by masahide sakuma published on July 1, 2012 12:53 AM.

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