音楽における音情報

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断定的に言ってしまえば音楽に含まれる情報は”音”しかありません。歌の場合言葉も大きな情報となりますが、それすら”音”としての認識から始まります。
さて、この”音”を扱う(ここに於いては音楽を作る上で)と言うことは想像以上にやっかいな事です。なぜなら人間(ほとんどの動物も同様でしょうが)にとっての音は生命を守るための情報あるいはコミュニケーションを取る為の情報としてとても重要であるが故に、音に対する知覚・認識はおそろしく敏感です。音色、音量、方向性、その時間的変化等々。実に些末な音の情報を認知します。
音の周波数で言えば20~20,000Hzくらい聞こえるとされていますが、実際には可聴範囲外の周波数変化ですら認識してしまいます。また時間軸に対しても1msec(1/1000秒)のズレですら簡単に認知します。
音楽に対する認識度で言えば、経験上僕ら専門で音楽に係わっている人間以上に一般の方の耳は敏感な様に感じます。僕らが「このくらいまぁいいか?」と許容するピッチのずれであってもリスナーからピッチ悪い!とつっこまれる事もあります。

音の”いい、悪い”という話しはよく出ますが、それに関しても経験上かなり共通な感覚で捉えられる様です。その感じ方は時代・環境とともに変化はするのでしょうが、普遍的な部分も大きそうです。

人それぞれの好みの音というのはありますが、例えばドラムのスネアの音ひとつにしても2種類のスネアを鳴らした時にどちらの方が良いと感じるかは(前提としてある種類の音楽、楽曲が決まっていた場合)かなり共通します。ギターの音色(楽器の違い、アンプの違いやピックの違いすら含め)とか、歌の声色(マイクの違い、部屋の響き等による違い)とかも同様にA-B鳴らした時にどちらがその場において”いい音”と感じるかの感覚はかなり共有されます。
もちろんこれらの情報ひとつひとつは出来上がった音楽を聴くリスナーには伝わりにくいのですが、それでも「あ、このギターいい音!」等と認識されます。

音楽を作ることとはとりも直さずこの面倒クサイ”音”を扱い、それに向き合うことです。
ところがさらに面倒なことに、そこには何も”正解”がありません。何でもありなのが音楽であるが故に更に難しくなります。ところがそれが”自分らが愉しむだけのモノ”であれば明らかに不正解など存在しないのですが、これを不特定な人に聞かせる場合には”不正解”な場合が生じます。例えばどんなにピッチがずれていようがどんなにリズムが変テコであろうが構わないのに、一般的にはそういった音は”不快”な音となってしまう様に。

”正解”は存在しないのに”不正解”はある、と言う矛盾を孕んでいるのが音楽です。さらに時々この不正解をパラパラとコショーの様に振りかける事で更に音楽が良くなることもあります。実に難しいのです。
この”正解・不正解”感は楽曲にも音色にも演奏にも録音にも全てのケースで存在します。正解が見えない分、不正解に気づかない・見落としてしまう場合も多そうです。

さて話しを戻して。僕ら音楽制作者の言う”良い音”とはこういった情報全てひっくるめての良い音(結果として良い音楽のため)の事であって、mp3とかwavとかの解像度の事でもオーディオ的な解像度や良い音でもありません。言ってしまえば良い音の本質は最終形態がmp3になろうがDSDだろうが決して変わらないものです。アナログの方がデジタルより良い音とか言われるのも、ここに於いては全く関係ない話しとなります。

楽曲の話しはひとまず置いておいた上で、僕にとっての良い音とは大雑把に言うと「良い楽器(良い声)」「良い演奏」「良い録音」(ライブに於いては最後の項目が「良い再生環境(PA,会場)」と言い換えられます)の3点に絞られます。全てはより良い音情報を伝えるためです。
その為には多くの知識・経験、また楽器を含む機材(新旧問わず)が必需となります。

今の時代、安価にお手軽に音楽を作ろうとすればいくらでも簡単にすることもできます。僕自身そういう手法で作る場合も少なくありませんし、それによって音楽の質そのものが劣化するとも単純には考えません。
ただ、より良い音情報を伝えて行く責務も感じます。その為にひたすら日々精進し勉強し思考を続けています。
それは音楽が”売れる・売れない”、音楽家が”食える・食えない”等と言った論議とは無縁の音楽人として追求すべき必然なのでしょう。

先日のブログ上に書いたことは、上記の様な前提に立った上での話しであることを追記しておきます。

About this Entry

This page contains a single entry by masahide sakuma published on June 19, 2012 11:34 AM.

昨夜の投稿の追加文 was the previous entry in this blog.

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