夕焼けの町

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産まれてから以後ずいぶん色々な場所に移り住んで来た。自分の記憶のためにその遍歴を記してみよう。

産まれたのは東京都文京区小石川。昭和27年(1952)。護国寺に近いところだったらしい。
1才になるかならないかで杉並区高円寺に移り住む。蚕糸試験所の近くだったとのことなので今の環七と青梅街道の交差点に近いところだったのだろう。
そこに数年居た後、多分3~4才の頃新宿区下落合へ。駅で言うと西武新宿線の中井駅。駅から坂を登っていくと幼稚園があった。その園庭越しに見える夕焼けの景色は未だに覚えている。時代背景含め僕にとっての『三丁目の夕日』の記憶。

風呂は薪で火を熾していた時代。しょっちゅう煙突から上る火の粉を追いかけて走り回っていた。
冷蔵庫は上の段に氷を入れる電気式ではないもの。毎日氷屋さんが大きな氷を届けてくれていた。
新宿区なのにトイレは汲み取り。大きくなったらなりたいと初めて思った職業がこの汲み取り屋さん。肥桶をリヤカーに積んで引き歩いていたという、今では全く信じられないような光景だが、何故かそれが子供心に格好良く映っていた。
佐久間家に犬が来たのもこの頃。シェパードとの雑種と言われていた犬(ポコ♀)は賢く立派な犬だった。

小学校2年で今度は杉並区下井草(下井草は駅。住所名は忘れてしまった)に。それ以後山の手での暮らしとなる。下井草の暮らしは案外長く中学3年の後半まで続く。子供のころのほとんどの記憶、音楽との出会いもこの土地でのもの。ここに暮らしていた間に今の自分は形成されて行った。

次ぎに移ったのが少し西の杉並区、西荻窪。住所は大宮前。
初めてレコードを買ったのが西荻窪駅近くの新星堂。「帰ってきたよっぱらい」フォーククルセィダース。洋菓子・レストランの「こけし屋」さんが大好きだった。それは多分今でも染みついている感覚。

西荻での暮らしは短く、高校2年で今度は世田谷区烏山へ。広々とした落ち着いた住宅街が好きだった。ここに居た間に一度大雪が降り、その日駅まで雪の中を走り足首を痛め、それ以後冷えるといつも痛むようになってしまったっけ。(ずいぶん年を取ってからいつの間にか治ったが)

高校3年の受験前頃に調布市に移住。父が初めて手にすることができた家。初めて”実家”と呼べた家。

以後家出のようなことをしたり、それ以後移ったのは21才頃か?渋谷区表参道の小さなアパート。
まだ「青山ユアーズ」(洒落たスーパー)のあった時代。原宿もまだステキな街だった。

次ぎに渋谷区富ヶ谷に移り、渋谷区松濤に移り・・・。数年後山手通りの工事が始まり、世田谷区深沢へ。

世田谷人生は意外に長く、この深沢7丁目の貸家に12年。プロデューサーとしてバリバリ(?)仕事を始めた時代。同時に、ただの”犬バカ”時代。

ひょんなことから、3軒隣の土地が空きそこに家を建てることになる。がその家には多分5年くらいしか住まなかった。それから人生初、東京を離れる。
ある日通りかかった完成したばかりの六本木ヒルズを目にし、突然「あ、この街(東京)にはもう居られない」と感じ、東京を離れることを決心。

横須賀市秋谷(葉山のとなり)の海沿いの山の斜面に建つ小さな掘っ立て小屋の様な古い家へ。
トトロ道と呼んだ獣道に毛の生えたような山道にヒョコっとある小さな小さな家がとても気に入った。もちろん車もバイクも自転車すら入って行けないところ。夜になれば真っ暗。月の明るさを初めて実感できた場所。帰宅する時はいつでも懐中電灯を片手にしなければ歩くこともできない急坂を下りて行くと真っ暗闇から犬達の声が聞こえてくる。隣家の音も無く、聞こえるのは波の音と虫の声だけ。

その秋谷暮らしも3年程で、今居る北関東へ。ここへ移って早2年ちょい。秋谷よりずっと田舎なのに随分便利な場所。

まず感じたのが『関東平野』の大きさ。東京に暮らしていた時に思っていた関東平野とはまるでスケールが違う。見渡す限り平らなのだ!そして初めて知ったけれど、平らだから大雨の後に水が引かない。低いところも高いところもないから水の行き場が無いのだ。


この町のステキなところ。夕陽がとてつもなく大きい。その大きな夕陽が沈んで行くと利根川の堤防沿いに夕焼けが広がる。明るいオレンジ色から徐々に濃いピンクへ変わっていく。
その色は僕が4~5才の時、新宿区下落合の幼稚園の庭から見た色とそっくりだ。50年以上前に見ていた色をこの町では今でも見られる。
その夕焼けとこの町に暮らす人達のホワンとした優しさと素っ頓狂とも思えるマイペースさがとても好きだ。

次ぎに移り住む町にもきっと初めての楽しみがたくさんあるんだろうな。

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7 Comments

Jackeee said:

お久しぶりです。

ふと思った事…。
今まで朝の遅い(早いと早過ぎる…??)事が多かったので
朝焼け、夕焼けと、大人になって印象に残ってるものが無いな〜なんて思っています。
ただ、実家は寒い所なので、やっぱり雪のある風景が
佐久間さんのそれと同じなのだろうなと思います。
心奪われたり、センチになる景色…随分とご無沙汰してるなと思う自分…。。。

山あり谷あり said:

コメントを返していただき有難うございました、茂木さん、既に亡くなって7年経つんですね。去年知りました・・。
亡くなった当時追悼コンサートが行われたんですね・・行きたかったな(涙)。。
でも佐久間さん始め多くの方が尽力されて、コンサートの場で皆さんで追悼されて、私もなんだか嬉しくなりました・・。
ロッキンオンでは渋茂対談といって、渋谷陽一さんとよく対談してたので、その辺もバックナンバーで無性に読みたいです。チープ・トリックのデビューの時は、渋谷さんと2人して絶賛しておられたのもよく覚えています^^。私はもっぱらライター茂木さんのファンでした。時々でよいので茂木さんネタがあったら書いてくださいませ。
・・でも佐久間さんの胸が締め付けられない程度に・・^^;

早希 said:

佐久間さんこんにちは。
私も、関東平野のすごさを実感している一人です。

前橋の利根川沿いに住んでますが、
実家は宮崎県都城市(ドラマーの永井利光さんと同郷)です。

実家は盆地で山から上り、山に沈む太陽を見ていましたが、
今では、関東平野から関東平野に、時に幻想的に上り沈む太陽を見ています。

見渡す限りの平野に、送電線が遠くまで延びているのが見えると、
平野に居るんだなと実感します。

山に囲まれていない、山がないと、ちょっと不安を感じたりもしますが(^^;)
そんな時は、赤城山、榛名山、遠くに谷川岳、浅間山をみて和んだりしています。

>エスプリ・ディスカリエさん

コメントありがとうございます。
今日の夕景もとてもキレイな町でした。毎日少しずつ違った色になります。どんなアートも自然には叶わないな〜とか思いながら夕焼け鑑賞です。

僕も思い出したくない昔・素直に振り替えれない昔があったと思います。
いつかエスプリ・ディスカリエさんにも全てを真っ直ぐ見つめられる時が訪れますように。

>山あり谷ありさん

茂木君の話ありがとうございます。読んでいてギュっと胸が締め付けられる思いでした。
僕の人生で多分唯一『親友』と呼ぶべき存在が茂木由多加でした。文章の着眼点も音楽の着眼点も、いつも彼ならではの独特の目線と洞察力でした。本当にたくさんの事を高校時代から教わってきて今の僕があります。言わば人生の大恩人でした。

山あり谷あり said:

最近、茂木由多加さんが既に亡くなったことを知り、それをきっかけにこちらも時々拝見するようになったものです。
高校時代茂木さんが執筆されていたロッキンオンをよく読んでいて、また、当時杉並の高校に通っていて東高円寺駅の近くを良く通っていたんですが・・今では考えられないことですが、ロッキンオンは執筆の連絡先=住所がそのころ掲載されていたので、茂木さんが住んでるのはこのあたりなんだな・・と蚕糸試験場のあったあたりを通るたびに当時思ったものでした。
茂木さんは、不思議な書き手で他のライターの人とは着眼点が一線を画していて・・年齢不詳な感じのほんわかした文章が面白かったのを覚えています。引越しなどでバックナンバーが手元になくなってしまったんですが、78年~82年頃のロッキンオンを最近無性に読みたい私です。佐久間さんも蚕糸試験場のそばに住んでいらしたんですね。
私自身は隅田川より東側にずっと住んでる下町人です。

エスプリ・ディスカリエ said:

夕景の写真にひきつけられました。
空の色が変わる時刻は
日常の暮らしの中で、途方もない時間と空間を意識する瞬間でもありますね。

母方の祖父が蚕糸試験場に勤めていました。
母の実家が荻窪なので(もうありませんが)
井草、荻窪、高円寺など懐かしい地名がでてきて胸が締め付けられます。

なるべく昔を思い出さないように暮らしてきましたが、
佐久間さんのように素直に振りかえられる人生は羨ましい。

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This page contains a single entry by masahide sakuma published on February 20, 2010 10:09 PM.

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